ロングランエッセイ

Vol.76 アントニオ・ガウディの生家

URB HOUSE PHOTO

 バルセロナに住むガウディ研究者・田中裕也氏の骨折りで、日本建築家協会の北海道支部とスペインのカタルーニア建築家協会が、交流の協定を結ぶことができた。交流を記念しての展覧会が、カタルーニア建築家会館で催され、住宅作品を含めて百点ほどが展示された。そのオープニングには、北海道から二十五人ほどが参加し、簡単なセミナーも行われた。札幌とバルセロナの人口が同じで、北緯も同じであることや、また北海道の建築は、積雪寒冷の特殊な条件の中で、技術的な積み重ねをしてきていることなどが話されたが、バルセロナの街を歩いてみて、ローマ時代以上にさかのぼるカタルーニア建築の歴史の重みをしみじみと実感させられた。また、サルバドール・ダリ、ジョアン・ミロ、パブロ・ピカソ、アントニオ・ガウディなどの巨匠を生んだカタルーニア地域の持つ独特な精神的な風土を感じたし、それぞれのもつ強い個性とそれを支える自尊心の高さを感じた。
 サグラダ・ファミリアの設計者として有名なアントニオ・ガウディ の生家を訪れることができた。バルセロナから車で一時間ほどの田舎にある小ぶりな農家だが、家の前の二本のスズカケの樹が、圧倒的な迫力を持っていた。まるで、アントニオ・ガウディが設計したようなダイナミックな形で、大地にしっかり立っているのを見るうちに、カタルーニアの芸術家を生む風土の力を強く感じた。
 これをきっかけに、来年九月末、カタルーニアの建築家が、北海道に来るようである。カタルーニアの歴史の重さに負けない、北海道の暮らしに根ざした鮮麗な颯爽とした北海道の住宅を見せようと思っている。

住宅雑誌リプラン・91号より転載



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