ロングランエッセイ

Vol.78 受け継ぐ

URB HOUSE PHOTO

 二十五年前に竣工したブロックの家の木製の窓枠を直すことになって、見積もりをしてみたら、思った以上にお金がかかりそうだという。住みなれた家だけど、それほど長くも住めないかもしれないので、どうしようという。この家は外断熱のブロック住宅で、環境に優しいつくりなので、経済的に住めることを強調して売り出してみようかと相談していたところ、娘さんがこの家を引き継いでも良いといわれたので、売り出すのはやめた。お金をかけて窓枠を直して、次の世代へ移行する準備に入った。
 これまで二十五年間かわいがられてきた家が、これから先も、かわいがってもらえるというのだから、嬉しいことである。それができるのも、ブロック外断熱の住宅が、暖房費用が少ないうえに快適な室内環境が保たれて、メンテナンス費用が少ないという特徴があるからで、五十年住み続けていくことには、まったく不安がない。といえるのも、これまでの二十五年間のしっかりした実積があるからである。家を二十五年ではなくて、五十年も使うと考えれば、建てるのにかかった費用を、二十五でなく、五十で割ると良い。半額となる。家を建てる時に、その家を何年使うかという判断をいれるべきであり、「もったいない思想」を五年、十年などという短い期間でなく、五十年、百年の期間で考えてこそ、環境に優しいサスティナブルな思想といえる。
 私の設計した外断熱のブロック住宅のなかで、同じように二十五年近く経っているが、改修と増築をして、娘さんが受け継いでいる家もあるし、高齢になられているが、ていねいに住みこなされている家もある。これからも、それらの家のお守りをしなければいけないという覚悟を持ったと同時に、私も元気でなくてはいけないと思った。

住宅雑誌リプラン・93号より転載



コンテンツ