ロングランエッセイ

Vol.116 コンキリエ

URB HOUSE PHOTO

根室に抜ける国道から厚岸町に入ると街を一望できるところにコンキリエがある。ピンクの丸みのある厚岸町の道の駅である。灯台のように見える4階からは、厚岸湖、厚岸湾が望め、食事もできる。市場のように、並んだ魚や貝や野菜などを買って、自分たちで炭火で焼いて食べる仕組みである。30年ほど前、海産物や農産物の生産だけでなく、それを使った食の文化を、町の起爆剤にしようと期待を込められた施設である。それからの暮らしの変化に対応し、目をかけ、手をかけながら、四半世紀も面倒を見てきた。
 25年以上、メンテナンスに気を使い、きれいに使いこなしている建物の持ち主や管理者や設計者を表彰する賞であるJIA25年選に、コンキリエが選ばれたので、受賞の銘板を厚岸町に届けた。外国からの観光者が激減している中、大型バスはないが駐車場には車があふれ、2階のレストランも、自分で焼いて食べる炙屋も混んでいた。お盆の時期であったせいもあるが、コンキリエが好かれている感じがして嬉しかった。「街に人が来るといつも、コンキリエに来るよ」といわれ、厚岸の人に愛されていると思ったし、25年の積み重ねが、コンキリエに対する「愛着」を深めたに違いない。また、コンキリエを気に入ってくれた下元英徳さんが創作した、コンキリエの折り紙建築をもらって嬉しかった。
 設計の良し悪しを超えて、愛され続けることこそが建築の本望ではないか、住まいこそ、愛着が求められていると思う。


住宅雑誌リプラン・131号より転載


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