ロングランエッセイ

Vol.120 五十年賞

URB HOUSE PHOTO

日本建築家協会には、二十五年経っても、美しく建築として機能しているものを表彰する二十五年賞というものがあるが、今、五十年賞も検討しているという。表彰されるのは設計者と施主であるが、最も努力されたのは、施主である。竣工後二十五年にわたって、使い勝手や建物の劣化や不具合を見つけ、修理や修繕、改造しながら、子供達の入学・卒業・就職・結婚を見届けて、二人でゆったりと暮らしている施主こそ表彰されるべきである。自分で建てた建築を心から愛していなくては、できないことである。
 二十五年賞を数年前に受賞した住宅の施主から呼ばれ、「この家を、これから続けて住む人のために手を入れておきたいので、どこまで手を入れたらいいか相談したい」と聞いて嬉しかった。外断熱なので、内部はほとんど無傷に近いが、外部に面したブロックや木製サッシ、ガラスなどは、手を入れた方がいいようだが、「手を入れてからも住み続けて、五十年賞をもらいましょうよ。お互い百歳を超えることになりますが、一緒に頑張りましょうか?」と笑ったが、半分本気である。
 本来、建築というのは、人を超えて生き続けるもので、そこを人が通り過ぎてゆくくらいの建築を残さなければならないと思っている。


住宅雑誌リプラン・135号より転載


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