Essay by Maruyama/連載エッセイ

vol.33「寒 さ」
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 今年の冬にマイナス33.6度迄、気温の下がった陸別に出かけた。その日の朝も、マイナス25.5度迄下がった。風が無いので、外に出てすぐは、それほど寒さを感じないが、衣服の温度は、一気に下がる。そうするうちに、寒さが一直線に襲ってくる感じになると、心まで冷えてくる。オーロラも見えるという天文台に登り、天体望遠鏡で北極星や土星を見せてもらい、屋上に出て星空を眺めているうちに、身体は、しんしんと冷える。受け付けでは、防寒具の貸し出しやホッカイロの販売もしていたが、道内の人でさえ厳しく感じる寒さであるから、内地の人は、ひとたまりもないと思った。
 弟子屈で、障害のある人にも優しい平屋造りの、小さな良心的なホテルが出来た。そこを経営する人が、来られる前に暖めておく部屋の床暖房の温度の調節が難しいという。寒さに対する感じ方が、違うのだろうか、来られた人の地域や地方によって、求める暖かさが違うという。寒いから温度を上げてくれといってくる一番は、北海道の人だという。ショックである。内地の人は、寒く感じると軽く一枚羽織るが、北海道の人は、薄着のままで寒い、寒いと騒ぐという。寒さにひとたまりもないのは、内地の人ではなく、北海道の人のようである。  過ぎたるは、及ばざるが如し。部屋の中を暖かくしすぎるのも…と考える。

※このエッセイは2000年春に掲載されたものです
住宅雑誌リプラン・48号より転載
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