Essay by Maruyama/連載エッセイ

vol.45「「サポーター」」
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 札幌のサッカーチームの[コンサドーレ]は、北海道産の日本語である。小柄ながら、吹雪の中でも立ち続ける北海道生まれの馬を、道産子という。北海道生まれの人間も同じように、道産子と呼ばれているが、そのドサンコを逆に読んでコンサド、後ろにサッカーの掛け声オーレを付けて、コンサドーレとしたのである。サポーター席で、まわりの人と一緒に「コンッサドーレ!」と叫ぶ時には、思わず連帯を感じるし、ドサンコとしてのアイデンティティを意識させられる。
 今、美唄市出身の彫刻家・安田侃が、世界的にも大きく注目されている。東京フォーラムの中庭に置かれ、まわりを優しい気持ちにさせているたおやかな白い大理石は、彼の作品である。この心象的な石の彫刻が、著名な建築家などから評価され、国内外に多くの作品が置かれている。
 今年六月「安田侃の世界」展が、道立近代美術館とアルテピアッツァ美唄で催されることになった。しかし、イタリアから北海道まで作品を送る費用が掛かりすぎるので、展示内容の縮小変更も検討しているという。それを残念に思う有志が、コンサドーレのサポーターのように、個人サポーターを募集して、安田侃の魅力を存分に表現する展覧会にしようと集まった。サッカーではなくて美術、しかも抽象彫刻のサポーターを集めるなど前代未聞であったが、不安なまま思い切って出発した。ところが一月末には、なんと三百名近いサポーターと八百万円近くの寄付が寄せられた。二月になっても、その数は増え続けている。
 拓銀、狂牛病、雪印など暗い事件ばかりが続く北海道のなかにあって、この美術サポートへの関心には心を熱くするものがある。これは、個人が、文化を支えていることの証拠である。そう、個人の建てる住宅も、同じように北海道の文化を支えているのです。

住宅雑誌リプラン・60号より転載
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