Essay by Maruyama/連載エッセイ

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 六年ぶりに、家具を見にコペンハーゲンを訪れた。北海道と同じ気候で少し肌寒かったが、相変わらず温かい感じのデザインが多かった。四十年も前にショウウィンドウで見たものが、今でも店に並んでいるし、モダンデザインの中古家具だけのショップもあり、名品といわれる家具も並んでいた。
 北欧には、家具に対する深いこだわりがあって、一度買ったものを大事に使うから、十分に吟味すれば、高くとも良いものを買うという覚悟がある。そこに、長く使い続けられる良いデザインの生まれる素地があるように思えた。ただ、家具屋が「四時や五時半で閉店です。祝日も休みです」といわれて慌てた。翌日が祝日だったので、デパートも家具屋もショップも休みで、仕方なく家具屋まわりをあきらめた。
 代わりに、屋外彫刻の展示とモダンアートの美術館として著名なルイジアナ美術館を訪れた。
 寄り付きは、古い一軒の住宅のように見えるが、敷地内に入るとバルト海に面した広い緑の中に、増築を重ねてきた低い建物が広がっている。芝生の上や、林や広場の中などに置かれた屋外の彫刻と一体となった外の空間が魅力的で、くつろぐところが多く、一日居ても楽しい美術館である。芸術家・デビュフェの作品を望むコーナーも、「うち」と「そと」のつながったさわやかな空間になっている。さらに、これもまた五十年も前の名品と呼ばれる椅子とテーブルが、「ここには、これを置くしかない」という関係で置かれていた。翌日が祝日で、ルイジアナ美術館に来れて良かったかもしれない。
 大量生産・大量消費の時代が来てから「安物買いの銭失い」という言葉が聞かれなくなった。しかし質を大切にするこれからは、もう一度この「安物買いの銭失い」を考えたいものだ。

住宅雑誌リプラン・77号より転載
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