Essay by Maruyama/連載エッセイ

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 私は、コンクリートブロックを二重に積み、その間に断熱材を充填した家をたくさんつくってきた。こうしてつくった家の中は、家じゅうがどこも同じ温度になるので大変評判が良い。家の外側は当然ブロックのままで、室内もブロックがむき出しになっているが、ブロックそのままはいやだという人は少ない。見た目がざらざらとして、洗いざらしのジーンズのような風合いが気に入っているし、きれいに積んだブロックは、洒落た洋服屋さんのショウルームの壁に使われるほど、絵画や家具や商品など置かれたものを引き立ててくれる。
 建てて二十五年経った家の中のブロックの壁が、全然汚れていないので、初めて訪れた人は驚く。壁は次第に乾いてくるので、できたときよりも、白く明るく軽やかになって、爽やかに感じられる。
 昨年訪れたオランダのクレラー・ミュラー美術館で、面白いブロックの壁を見つけた。美術館の庭にあるリートフェルト・ミュージアムは、薄く平らな屋根と薄い壁と細い柱の構成が美しい、爽やかな建築であったが、そこに小さな穴がたくさん開いたかわいい壁があった。縦に積むものを横に積んでいるので、もともとは見えない穴が見えているのだが、その小さな穴の表情とランダムな感じが可愛らしい。どの穴も同じ顔でないのが楽しい。これを設計した建築家リートフェルトは、近代の名品といわれる美しい小住宅を設計しているが、住宅を造る細やかさが、このミュージアムにも現れている。「こんなブロックの使い方があるのだ」と、驚いた。それも四十年も前に造られていた。
 不ぞろいの小さな穴が並んだ白い壁は、人に優しく、人を呼び寄せるような気がした。ブロックを使って、このように人が近づいてくるような家ができないものだろうかと思う。

住宅雑誌リプラン・83号より転載
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